1999年5月10日(月)熊本日日新聞

 友よねむれ シベリア鎮魂歌
=身を削って描いた戦争の実像= シベリア抑留 画集に

A4判95ページ 3360円  シベリア抑留を描いた油彩が話題を呼び、作品が東京の世田谷美術館に収蔵されたアマチュア画家の久永強さん(81)=熊本市大江=の画集「友よねむれシベリア鎮魂歌(レクイエム)」が、福音館書店(東京都文京区)から出版された。 久永さんは菊池郡西合志町出身。昭和6年に満州の大連に渡ったが、同19年召集され、中国北部の前線に。敗戦後シベリアの収容所に送られ、24年帰国した。その後、抑留体験を描く香月泰男の作品に感動し、シベリアをテーマにした油彩に挑戦。平成6年に熊本、同7年に東京で開いた個展が好評を得、作品は、素朴派の収集で知られる世田谷美術館に収蔵された。 「友よねむれ」には、シベリア・シリーズの43点を収載。黒の背景に黒の服を着た男の目だけが異様な青さをたたえる「鬼の現場監督」、暗い部屋に一条の薄日が差し込む「営倉(冷凍の部屋)」、飯ごうを見つめる人々の視線を点線で描いた「飯盒(はんごう)から目を離すな」…。身を削るような思いで描かれた作品が、久永さんの解説文とともに収められている。戦後50年を過ぎ、戦争体験が語られる機会も少なくなった。「今は戦争をゲームのようにとらえる人もいるが、決してそんなものではない。戦争を知らない若い人に見てほしい」と久永さんは話している。

A4判95ページ 3360円。


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